コラム「障がい」と「仕事」
難病と仕事「就職への道のり」切り開くには❓難病の就職事例紹介
2024.04.22
本日は難病と仕事がテーマです。
難病の方は「就職までの道のり」どのようにを切り開くとよいのでしょうか。
難病の方の気持ちになってみてきましょう。
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現在、国が指定する難病は 341種類 あります。
難病特性ゆえに、身体障がいを合わせもつこともあります。難病を抱える人達は、治療法が確立していない病を持ちながら、働くことを模索されています。
参考:厚労省 R6.4月341種類になった指定難病病名一覧表[26KB](Excel)
1.難病とは
みなさまは「難病」と聞くと、どのような印象がありますか❓
様々な難病がありますが、「不治の病」「余命わずか」など、間違った解釈や難病当事者への偏見などにより就職への道のりの壁となることは少なくありません。
まず、難病を正しく理解しましょう。
1.難病とは
- 1-1 難病を理解する
- 1-2 難病患者数1位~3位とは
- 1-3 難病に対する国の対策
- 1-4 障がい認定は?難病と就職の現実
難病の定義は2015年に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」より、以下4つの要素をすべて満たす疾患とされています。
1-1 難病を理解する
難病の定義より、希少な疾患であることがわかりました。
難病の方は定期健診や服薬などの自己管理を継続し、職場の環境調整があれば問題なく働ける人が多くいらっしゃいます。
その一方で完治は未だ難しいことが多く、軽症を維持していても、健康状態の観察がかかせません。
1-2 指定難病患者数1位~3位
国が指定する難病は、令和6年4月に3つ追加され341種類となりました。
一番多い難病は何でしょうか。
令和4年度の難病情報センターによる調査で公開されているものを確認してみましょう。
1位 パーキンソン病(神経・ 筋疾患) 143,267人
指定難病6 脳の特定の領域がゆっくりと変性していく病気。
症状として、運動障害のふるえ、筋肉のこわばり、姿勢保持障害(転びやすい)などがあげられます。
2位 潰瘍性大腸炎(消化器系疾患) 141,387人
指定難病97 下痢、けいれん性または持続的な腹痛を伴う炎症性疾患。
潰瘍性大腸炎は多くの方に症状の改善や消失(寛解)が認められますが、再発する場合も多く継続的な内科治療が必要な難病です。
3位 全身性エリテマトーデス(免疫系疾患) 65,145 人
指定難病49 自己を守ってくれるはずの免疫が自分自身を攻撃する病気。
症状として発熱、倦怠感、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経や内臓等の症状が現れる難病です。
1位のパーキンソン病と2位の潰瘍性大腸炎は僅差で、難病患者数は年度ごとに入れ替わりが見られます。
難病患者数が多い順にご紹介しました。この数は医療費を軽減する「特定疾患医療受給者証」所持者数の為、全体数はこの2倍以上とも言われています。
参照:難病情報センター 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数
1-3 難病に対する国の対策
国の対策はこちらの3つで進められています。
【難病に対する国の対策】
- 調査研究の推進
- 医療施設の整備
- 医療費の自己負担の解消 「指定難病自己負担上限管理」
難病は治療法が確立されていない疾患ですので、患者の協力を得て調査研究を重ねています。また完治が難しいことから、医療費の軽減「指定難病自己負担上限管理」という制度があります。長期的な診療が経済的な負担となる際は上手に利用してくださいね。
医療費軽減は「指定難病者への医療費助成制度のご案内」をタップ👇
参照:難病センター指定難病患者への医療費助成制度のご案内
一方で、生命の維持が困難なことや自立生活が送れないことは、難病の条件に含まれていないことがわかります。医療の進化とともに軽症化し、うまく難病と付き合いながら生活、仕事をしていける方も多いのです。
1-4 障がい認定は?難病と就職の現実
難病ではあるけれど、障がい認定されない、障がい者手帳を持てないケースはたくさんあります。
そうすると障がい者雇用ではなく一般就労での就職となるのですが、ここで課題となるのが、企業から難病を正しく理解してもらいにくいことです。
難病の方は「健常者ではないけれど、障がい認定もされない」というアンバランスな状態だったりします。
具体的にいうと、
①就職活動で履歴書に難病であることを開示して「不採用となった」経験を繰り返す。
②「難病を開示したから不採用だった」と思い、病気があることを開示しなくなる。
③難病であることを伏せて就職活動し、再就職。仕事をするが調子を崩してしまう。
④結果、何度も転職してしまう。
…という負のサイクルが出来上がります。
難病に限らず、障害がある方に起こり得そうなことですが、何とか防ぎたいものです。
難病のある人は「働けない病人」ではなく、「持病をもつ労働者」と、視点を変えることが必要になってきます。
2.難病の方の「就職への道のり」
難病だけでなく、特性上の身体障がいもあることも正しく理解し、「持病をもつ労働者」であるとの視点を大切にしたいですね。
本題の、難病がある方の「就職への道のり」を前向きに見ていきましょう。
【就職への道のり】
- 難病を自己受容する
- 働く理由
- 主治医、ハローワーク、福祉サービスや専門家へ相談
- 働き方、職業の選択
●難病を自己受容する
難病の方の「就職への道のり」はたやすいものではなく、困難なことが多々あります。その中で一番最初に乗り越えることは、いったい何でしょう。
それは、自己受容です。
難病があっても働ける人は多くいらっしゃいます。
ただし一般的に病気自体は完治することがない、と言われており、治療法も確立されていないため、服薬やリハビリをしながら生活の質を保っておられます。
いきなり難病と診断された場合、今後の見通しが立たないことは当事者、家族にも精神的にかなり辛い状態と考えられます。
「就職への道のり」で最初に乗り越えることは、難病になったご自身をどう納得させるか、だと思われます。
服薬・食事改善・運動をする、という意味では、難病は糖尿病や高血圧と同じで、上手に付き合う「慢性的な病気」と考えるとよいかもしれません。
●働く理由
だからこそ難病がある人は一生を病気の治療に費やしたくはないのです。
生きがいを求め、経済的自立を望む、仕事を通して社会とつながる、ことを考えます。
家族がいる場合、「経済的に支えていた自分が倒れてしまった」と自分を責める事もあるかもしれません。
難病になる前と同じようにはいかないかもしれないけれど、家族のために働く、自分の為に働く。社会とつながる。
一般の方と同じような働く理由がそこにはあります。
●主治医、福祉サービスや専門家へ相談
時間がかかるかもしれませんが、難病と特性ゆえの身体障がい等をご自身が受け入れる事ができれば、「就職への道のり」中間ステップです。
次は主治医、ハローワーク、福祉サービスや専門家へ働くことについて相談しましょう。
自己判断はせず、必ず主治医からの意見をもらいます。就職希望先へは「主治医の意見書」を渡すと効果的です。
主治医から「働ける」と言ってもらえることは、大きな自信へつながります。
(タップすると厚労省の情報へジャンプします👇)
【難病の方の就職 相談窓口】
- ハローワークハローワーク「チーム支援」PDF
- ハローワーク「難病患者就職サポーター」
- 各地 障害者就業・生活支援センター
- 障がい福祉サービス「就労移行支援」
このようにサポートしてくれる機関がありますので上手に頼ってくださいね。
この「就職への道のり」中間地点では、再就職に必要な職場環境、体力、仕事内容を整理します。
●働き方、職業の選択
後半の「就職への道のり」では自分の強みを正しく理解し、適した働き方、職業を選択します。
この職業選択がピッタリあてはまり、就職活動でしっかりとPRできると企業側も「難病を持つ人」というよりも「仕事の成果を上げる人」として積極的に受け入れる可能性が高まります。
難病の人におすすめの仕事としては、心身への負担が少ないデスクワークが挙げられます。
難病の方へおすすめの仕事
- 一般事務
- コールセンター
- 経理
- 人事
- プログラマー、システムエンジニア
- Webデザイナー
- ライター
- データ入力
オープンorクローズ就労
障がい者雇用制度は、障がい者手帳をもっている方が対象となりますが、難病があるけれど、障がい認定されない方は大変多い現状があります。
ここで「難病を開示するか」「難病を伏せるのか」の二つの選択をしなければいけません。
いわゆる、「オープン就労」「クローズ就労」です。企業の雰囲気や他に障がいがある方が働いているのか、など調べながら検討されるとよいでしょう。
障がい者手帳をお持ちの難病の方は、障害者雇用制度を利用する事が可能です。
平成28年 障害者手帳所持者の割合は56.3%、障害者手帳非所持者の割合は32.1%。
参照:厚労省H28年生活のしづらさなどに関する調査PDF
3.職場における環境調整
【安全配慮義務】
そうはいっても、企業側には安全配慮義務があり、「企業は従業員が常に安全で働きやすい環境で仕事できるよう配慮しなくてはならない」ということが、労働契約法の第5条に定められています。
難病の方への採用について慎重になることも当然です。そのため、履歴書の中で、「企業側のリスクは回避できる、大丈夫だ」と、納得してもらう必要があります。
その為には
- 医師の意見書
- 周囲からの援助がある(就業・生活センターや就労定着支援など)
- これまでの経験
- 通院などの配慮があれば問題なく働ける
これらのことを履歴書に記載、同封して、しっかり伝えましょう。
難病と関係なく「あなたをぜひ採用したい」、と思ってもらえるようなスキルアップ・魅力的に感じられるか、自分自身を振り返ることも必要です。
【職場における環境調整 】
最終段階の「就職への道のり」は、職場におけるソフト面、ハード面の環境調整となります。
企業が難病がある方を採用をする上で、以下のような配慮があると仕事で成果を生みやすくなります。
【ソフト面の配慮】
- 勤務時間中の自己管理(水分補給や服薬タイミング、トイレ)
- 仕事上の相談にのってもらえる環境
- 定期的な通院への配慮
また、フレックスタイムなどの柔軟な勤務時間やリモートワークで働けるようなことも効果的です。
企業は適切な職場環境を提供することで、難病がある職員と協力しあい、成果を生み出す力へ変換しましょう。
【ハード面の配慮】
- バリアフリーな環境(転倒防止、車椅子など)
- 階段に手すりを付ける
- IT機器の活用
ハード面は難病ゆえの身体障がい等により環境整備が必要な時、となります。こちらは国の助成金を活用することができることがあります。
助成金、詳しくはこちらから👇
参考 厚労省:「障害者作業施設設置等助成金」 PDF
職場における環境調整をソフト面とハード面で見てきました。
難病がある人、難病ゆえに身体障がいのある人が働くための職場における環境調整や配慮事項は、他の方へも共通すること、になると思いませんか?
働く人はさまざまな事情を抱えながら仕事をしています。例えば、小さいお子さまがいたり、高齢者介護を抱えている、などです。
働き方も多様になり、リモートワーク、短時間労働、フレックスタイムなどを選ぶことができるようになりました。難病の方へ職場環境調整を行うことは、働く全ての人にとっても働きやすい職場を提供することになりますね。
一方で、企業の安全配慮義務の問題がありました。難病の方の「就労までの道のり」最後の難関は、企業における安全配慮義務、職場環境調整の両方の課題がクリアになることです。
難病の方の「就職への道のり」は一人だけの事ではなく、この社会で考え、道がが平らになると歩きやすくなります。
4.難病と身体障がいの就職事例2つ
実際の就職事例を2つご紹介します。難病と身体障がいを合わせ持つ方の「就職への道のり」がイメージしやすくなるかもしれません。
Aさんの例
特発性拡張型心筋症(心臓の病気)指定難病57
40代後半で難病を発症。心臓、内部疾患の身体障がい
一時期はひどい息切れと倦怠感のため歩くことが困難なほどでした。
半年間療養しながら仕事を探していたところ、障がい福祉サービスの就労移行支援を知り、利用します。
就労移行支援を7ヶ月利用し、8時間労働の体力がついたところで就職活動をし、WEBマーケティングの仕事に一般就労で再就職ができました。
決め手は、過去の実績と仕事で貢献できる内容を積極的に提案したこと、主治医の診断書を提出、(働ける)といった内容を添えたことだったのではないかと振り返っています。職場における環境調整はリモートワークです。
Bさんの例
潰瘍性大腸炎(消化器系疾患)指定難病97
接客販売の仕事をされてたBさんは30代半ばで潰瘍性大腸炎と難病と診断されました。
腹痛があるため継続した立ち仕事は難しく、再就職には体力の軽減のため、座り仕事の内勤職を希望しました。
未経験でしたが、販売の仕事でも行ってきたパソコンスキル、データ分析、電話応対力をPRし再就職することができました。決め手は、多様で豊かな経験と敬語などのビジネスマナーが整ってること。職場内でコミュニケーションがうまく測れそう、と採用担当者へ印象付けができたこと、と聞いています。
職場における環境調整はとくに必要とせず、「難病を抱えていると知ってもらう」だけでも、精神的に楽になれたそうです。疲れすぎない範囲の1日6時間で仕事をされています。
この2つの事例はこれまでの経験をアピールすること、職場における環境調整の必要性や仕事で貢献できることを積極的に提案していることが共通しています。
難病を開示していますが、採用担当者へもポジティブな印象を与えることができたのですね。
勇気を持って前へ進み、自分の力を信じることで、「就職への道のり」を切り開くことができそうです。
5.まとめ
難病と仕事、「就職への道のり」いかがでしたでしょうか。
難病の方が「就職への道のり」を切り開くには、本人も社会も難病を単に病気や障がいではなく、新たな可能性としてとらえることが重要だと思います。
難病の方が求人の申し込みをしてきた際に、求めるスキル不足で不採用なら当然の事と言えます。しかし、偏見ゆえ書類選考ではずれてしまい、就職できないのであればもったいないこと、とも言えそうです。
企業は難病がある方々の声に耳を傾け、安全配慮とともにその人の可能性を最大限に引き出す工夫を考えていけるとよいですね。
本日の内容をまとめます。
難病と仕事「就職への道」
- 社会が難病を正しく理解する
- 難病・身体障がいを自己受容する
- 主治医、福祉サービスや専門家へ相談する
- 企業は職場における環境調整を検討する
- 就職に必要な職場環境、体力、仕事内容を整理し行動へ移す
難病の方が就職活動で成功するには、特性ゆえの困難を克服するだけでなく、社会全体が協力し合うことが欠かせません。そのために、難病を正しく理解し偏見をなくすことから始まります。
地域で安心して仕事をしながら暮らしていける、ノーマライゼーションの理念が浸透されると生きやすくなりますね。
わたしも難病をもつひとりです。
難病の方は大変辛い思いを克服されたのちに再就職を検討しています。それゆえ「就職への道のり」は、明るく照らされてほしいと切に願います。
そして就職希望の難病の方は、働くために自己管理と生活の質を保ちつつ、仕事に必要なスキルアップも考えてみませんか。
多様性の中の可能性を探しましょう。きっと輝くものがみえてきます。
このコラムを読む方が、少しでも難病を理解していただけたなら幸いです。
参考:難病情報センター
これからも多様性の世の中、ご一緒に自分らしく障がいと共に生きていく中の「働く」を考えてまいります。
筆者プロフィール
監修 Macco.Matsuzaki
経歴 就労系障がい福祉サービス歴16年 就労継続支援A型B型 就労移行支援 管理者・サービス管理責任者 / 採用担当 / 就職のサポート/営業・販売ルート促進
所属 株式会社クラ・ゼミ 福祉部門就労移行支援事業企画
資格 産業カウンセラー/サービス管理責任者
📢 次回は4/28(月)掲載予定です。
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