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上前津
【利用者ブログ】中部地区の公共交通 三岐鉄道北勢線
2024.07.31
こんにちは、名古屋市中区にある就職に強い就労移行支援アクセスジョブ上前津です。(在宅支援も充実!)
今回もWebライティングで利用者さんに書いていただいた記事を紹介させていただきます。
なかなか力の入った記事になります!
中部地区の公共交通 三岐鉄道北勢線
~北勢を走る、路線バスより遅い!? 小さな鉄道の大きな魅力~
1. 概要 ~路線バスより遅い!?小さな列車~
三重県桑名市には同じ区間を走る路線バス[1]よりも遅い速度で走る小さな鉄道が走っています。
この鉄道は三岐鉄道㈱北勢線といい、軽便鉄道という珍しい規格の鉄道です。
現在、同規格の鉄道は国内で3か所でしか走っていません。
そんな北勢線は珍しい鉄道であると同時に、沿線住人の日常の交通手段でもあります。
今回は三岐鉄道北勢線の魅力について紹介します。
2. 軽便鉄道について ~公共交通だった小さな鉄道~
日本の鉄道のレール幅(軌間)の規格として、標準軌[2](1435㎜)と狭軌[3](1067㎜)、ナローゲージ(762㎜)と3種類が採用されています。
今回、紹介する軽便鉄道はナローゲージの規格を使用しています。
軽便鉄道は開業するのに建設費や運営費を抑えられる事、また、土地の制約を受けずに線路を敷設できる事から、明治から大正期にかけて北は北海道(拓殖鉄道)から南は沖縄(沖縄県営鉄道)まで多くの地域で運行され、人々の交通手段として生活を支えてきました。
しかし、軌間が狭い為に、高速かつ大量に人や物を輸送できない事から、輸送力向上の為に改軌[4]による規格向上や路線バスへの転換、モータリゼーションの流れにより、軽便鉄道は徐々に姿を消していきました。
そして、1970年代にはほぼすべての路線が廃線となりました。
現在は、産業輸送[5]や娯楽目的(動態保存[6]や遊覧鉄道[7])がほとんどで、交通手段としては使われておりません。
現在、公共交通としての軽便鉄道は三岐鉄道北勢線、四日市あすなろう鉄道内部・西日野線、黒部渓谷鉄道本線(但、目的はダムの資材や関連職員の輸送がメイン)だけです。
3. 路線データ ~北勢線の基本情報[8]~
- 起点 西桑名駅(三重県桑名市)
- 終点 阿下喜駅(三重県いなべ市)
- 駅数 13駅
- 軌間 762㎜
- 総延長 20.4km
- 運行速度 最高速度45㌔(平均20㌔)
- 運行会社 三岐鉄道株式会社
- 路線状況 全線単線[9]
4. 北勢線の歴史 ~小さな列車の大きな物語~
ここでは北勢線の歴史を軽く触れていきます。
①創業期~小さな鉄道の誕生と大きな躍進~
1914年4月北勢鉄道㈱ 創業、ここから北勢線の歴史が始まります。
大山田駅[10]~楚原駅間の14.5km運輸営業を 開始。
1915年8月大山田駅~桑名町駅[12]開業。
1916年8月楚原駅~阿下喜東駅間 開通
1931年7月六石駅[13]~阿下喜駅間 開通、同時に電化[14]も完了
1934年6月北勢電気鉄道[15]に商号変更
開業から全線開通まで順調に成長を続けた北勢鉄道ですが、時代の大きな影が小さな鉄道を襲います。
1942年陸運統制令施行が施行され、日本中で中小零細の鉄道会社や陸運会社が国の命令により合併していき、北勢線も例外ではありませんでした。
1944年2月 北勢線は三重交通に統合されます。
②三交と近鉄傘下時代~大企業傘下の小さな鉄道~
北勢線は三重交通㈱と統合され、三重交通の傘下で終戦を迎えます。
1964年2月三重交通が鉄道とバス事業を分社化し、これにより三重電気鉄道㈱に移行します。
1965年4月近畿日本鉄道㈱(近鉄)が三重電気鉄道㈱を買収します。
上記の事情により、北勢線は近鉄傘下に入りましたが、大企業に属していたおかげで、中小零細企業が多かった軽便鉄道は、次々と廃業や路線バスへの転換で姿を消す中、生き残り走り事が出来ました。
しかし、小さな鉄道に平成不況の大きな影が襲います。
2000年7月 近鉄は経営改善計画を公表し、不採算路線の廃止を言及します。
その中には北勢線も含まれ、小さな鉄道に廃線の危機が訪れます。
③廃線寸前の北勢線~小さな鉄道を襲う最大の危機~
2000年8月沿線の1市3町[16]と三重県は「北勢線問題勉強会」を組織し、バス転換か鉄道存続かを話し合います。
2001年2月「近鉄北勢線利用推進協議会」を設置します。
調査の結果、北勢線の利用者の8割が定期客であり、その半数が学生と判明します。
上記の結果を受けて、協議会は北勢線を存続する様に方針を固めます。
しかし、近鉄は翌年に北勢線の廃止届を国土交通省に提出し、受理されました。
そして、2003年3月末で北勢線の廃線が確定します。
廃線まで残り少ない時間の中で、北勢線の沿線自治体は窮地に晒されます。
そこで、沿線自治体は最後の希望として、県内のある鉄道会社に北勢線の存続を要請します。
その会社は北勢線と員弁川を挟んで並行して走る、三岐鉄道といいます。
※三岐鉄道は富田[17](四日市)~西藤原(いなべ市藤原町)を結ぶ三岐線を運行し、親会社[18]が生産したセメントやその関連製品[19]の貨物輸送をメインに、旅客輸送まで行う珍しい会社です。
協議の結果、三岐鉄道は近鉄北勢線を継承する事を了承します。
しかし、北勢線の存続費用として合計68億円[20]必要であると試算されました。
2002年6月北勢線の沿線自治体は三重県に13億円の財政支援を要請。
8月、県は支援条件として、鉄道を活かしたまちづくり計画の策定するように自治体に求めます。
最終的には沿線自治体が53億円、三重県が2億円を支援する事で合意し、
近鉄からの3億6000万円で譲渡され、その半分の費用を三重県が負担しました。
こうして近鉄北勢線は三岐鉄道㈱に回収されました。
④三岐鉄道買収後の北勢線~小さな鉄道の大規模リニューアル~
近鉄時代の北勢線の問題として、車両内に冷房が無い事や運行速度が遅い事が問題点としてありました。
三岐鉄道買収後は既存の車両や設備を活かしつつ、大規模なリニューアルを行います。
2003年4月 三岐鉄道北勢線として運行開始
同年5月 三岐鉄道の企業カラーである黄色い車両[21]を運行します。
2004年4月 5ヵ年計画で「北勢線高速化事業」開始します。
内容は列車交換施設[22]の設置や駅の統廃合[23]、路線状態の改善の工事から所要時間の短縮計画[24]を行いました。
2006年4月「北勢線近代化事業」を開始
全駅に自動改札機の設置、東員駅舎整備、車両の冷房化[25][26]や列車の高速運行[27]を目標に、鉄道設備の工事や車両設備の改修[28]も行いました。
この他にも、沿線自治体やその住民が一丸となった利用促進の取り組み例として、
- 駅周辺にパークアンドライドの為、全13駅に無料駐車場または駐輪場の設置[29]
- コミュニティバス[30]との乗り継ぎ改善
- 1日乗車券や温泉入浴券付き(阿下喜駅下車)[31]のチケット等の企画乗車券の発売
- 親子ツアーやハイキングなどのイベント
- 鉄道グッズ販売・沿線情報誌の「ecotrans」の発行
- 駅前の美化活動
- ラッピングを施した企画列車[32]の運行 などがあります。
三岐鉄道が行ったリニューアルや沿線自治体や地域住人の利用者促進促す為の努力が功を奏し、以前は年間200万人以下を割り込んでいた利用者が増加に転じ、2018年には275万人に回復しました。
しかし、北勢線の赤字は近鉄時代よりは少なくなりましたが、自治体からの支援を受けて運営しているのが現状です。[33]
5. 終わりに ~三岐鉄道北勢線に乗ってみよう~
北勢線には上記で記載した事以外にも、沿線には観光スポットや土木遺産にも認定されている橋梁等の多くのおすすめポイントがあります。
皆様も機会があれば北勢線に乗りに来てはいかがでしょうか?
北勢線は西桑名駅であなたの乗車を待っています。
引用文献
三岐鉄道株式会社. (日付不明). 90周年記念事業公式サイト 第8話「北勢線運行開始」. 参照先: 三岐鉄道: https://sangirail.co.jp
椙山満. (日付不明). 北勢線 90年の軌跡. 参照先: asita04.com/toro/rekisi/rekisi90.htm
鉄道協議会. (2023年5月23日). 【三岐鉄道】 北勢線が廃止にならない理由ー沿線住人にできることは? 参照先: 鉄道協議会日誌: https://tetsudokyogiki.net
[1] 三重交通21系統 桑名阿下喜線(桑名駅前~阿下喜区間)
[2] 新幹線、JR山形線(奥羽本線の福島~新庄間)近鉄、名古屋市営地下鉄東山線など。
[3] JR在来線、名古屋鉄道、遠州鉄道、名古屋市営地下鉄桜通線など。
[4] 線路の幅を変更する事、軽便からの改軌例では近鉄湯の山線(762㎜→1435㎜)など。
[5] 安房森林軌道(鹿児島県屋久島)等
[6] 赤沢自然休養林の木曽森林鉄道(長野県木曽郡上松町)等
[7] 愛知こどもの国「こども汽車」(愛知県西尾市東幡豆町)等
[8] Wikipedia三機鉄道北勢線 参照
[9] 起点から終点へ向かう列車と反対に向かう列車が、1つの線路を共用して走る事
[10] 現在の西桑名駅
[12] 1961年廃駅(現在、跡地は桑名病院の駐車場になっている。)
[13] 1931年に阿下喜東駅から名称変更、2004年廃駅
[14] 列車や機関車を架線からの電気で動かすこと。
[15] 電化前まで蒸気機関車で運行していた。
[16] 桑名市、東員町、北勢町と員弁町(現在は合併していなべ市)
[17] 三岐線は貨物列車がJR富田駅、旅客列車が近鉄富田駅を発着する。
[18] 浅野・小野田セメントが共同で設立(現在の太平洋セメント㈱で筆頭株主)
[19] 太平洋セメント㈱ の藤原工場で生産している。(東藤原駅に工場が有)
[20] 内訳は車両や鉄道設備の改修費用(53億円)や近鉄への譲渡費用(13億円)
[21] 上の写真を参照
[22] 列車同士の行き違いが行える様に、スペースを作る事
[23] 星川駅(桑名市)の移設と乗車人員の少ない7駅を廃駅にする。
[24] 阿下喜~桑名間を現在の52分から10分短縮の42分で運行する事を計画する。
[25] 近鉄時代は非冷房であった。(空調は車両の中に設置する)
[26] 2023年時点で、一部の列車や車両が非冷房です。(非冷房の表示や案内放送有り)
[27] 列車の速度を70㌔で運行する事を目標
[28] 地上側の線路や信号設備が高速化未対応なため、現状の45㌔で列車を運行
[29] トータルで駐車場は500台以上、駐輪場は850台以上駐車スペースがある。
[30] 桑名市はバスの運行計画を見直し、東員町は新たに運行を開始する。
[31] おふろcaféあげき温泉の入館券と西桑名~阿下喜間の往復切符のセット
[32] クリスマスやハロウィン等のラッピングや復刻塗装(白と緑色)等
[33] 2018年時点の三岐鉄道(三岐線・北勢線を合わせて)の赤字額は約3億円
何度も情報を整理し確認され、しっかりとまとめていただきました。
三岐鉄道北勢線への強い想いが感じられましたね!
職員も三岐鉄道北勢線に興味が湧きました。
黄色い電車、かわいいのでいつか乗ってみたいと思っています!
今後も利用者さんに書いてもらった記事を紹介していきたいと思っております。
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