コラム「障がい」と「仕事」
【障がいと仕事】生活の安定を支える心と身体の健康管理
2024.08.12
こんにちは。
前回仕事をする上での基礎となる職業準備性ピラミッドについてお話しました。もしご覧になっていない方がいましたらこちらの記事をぜひご確認ください。
今回はピラミッドの最も下位を支える「心と身体の健康管理(病状管理)」についてお話していきます。
の流れで確認していきたいと思います。
1.心と身体の健康管理(病状管理)とは?
前回のコラムでも、職業準備性を整えることは私たちが仕事を考え、健康で豊かな生活を送っていく為に大切なこと、とお話をしたかと思います。
その健康で豊かな生活と安定した職業生活を送るためには、「心と体の健康管理(病状管理)」が欠かせません。
職業準備性ピラミッドの最も基礎となる部分である「健康管理」は、すべての職業スキルの土台となります。
ここでは、具体的な健康管理の要素とその重要性について詳しく見ていきましょう。
①医療管理(通院、服薬管理、定期健診)
皆さんは発熱症状や、日常生活を送る上で困った症状がみられたら、病院にいきませんか?
特に初めて体験する症状や、その時に大切な予定があった時ほど、早く通院して医師の判断を仰ぎたいと思うのは通常のことかと思います。
ですが、意外と定期健診に関しては、症状がなくあまり困っていないと、予定を後回しにしてしまったり、数か月に一度の通院ですと少し億劫に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ではなぜ、心と身体の健康管理において「医療管理」が大切なのでしょうか。
まず、定期的な健康診断や病気・怪我の治療は、ご自分の健康状態を把握することができますし、何か問題があったとしても早期に発見することで早めに対処していくことができます。
定期健診をしている方ですと、「最近眠りが浅くなってきた」「気になる症状がある」等日常で気になったことを主治医に相談することができます。
もしかしたら気付かないうちにストレスを溜めこんでいる可能性もありますし、少し気になる症状が時には大きな問題になってしまうこともあります。
日頃からご自分の健康状態を振り返り、心配なことは早い段階で相談をしていくことが大切です。
「医療管理」の中では特に、処方された薬を正しく服用することが重要です。
皆さんが服薬している薬は、何かしらの症状の治療の為に処方されているかと思います。
医師は皆さんの症状や体調に合わせて薬を出していますので、医師の指示に従った服薬をしていきましょう。
薬の中には副作用や、飲み合わせの悪いものもありますので、服薬をしていくうえで副作用や相互作用に注意することは、日常生活を安定させるための基本となります。
正しく薬を服用していても症状が改善しない、副作用などの症状がみられる場合は、ご自分で判断なさらず、医師に相談し指示を仰ぎましょう。
就職すると職場では、皆さん一人一人が戦力です。
一人が体調不良で欠勤するとします。体調不良時はお互いさま、業務のスケジュールに影響しないよう職場の同僚や上司が精一杯フォローしてくださることでしょう。
一方で「仕事をする=プロ(給料をもらう)」として「体調管理も仕事のうち」と、自分をケアする日々を心がけたいものです。プロとして職場を支え仕事の中で活躍していくために、日頃から通院や服薬の管理をしっかり行いましょう。
仕事において欠勤がないことは職場からの信頼を得る事になり、安定した職業生活、収入維持につながります。
②生活習慣を見つめなおす
心と身体の健康管理のためには生活習慣を見つめなおすことも必要です。
生活習慣の中では、「バランスの取れた食事」、「十分な睡眠」、そして「適度な運動」は、健康を維持するための三本柱です。
ここではその三本柱について確認していきましょう。
バランスの取れた食事
栄養バランスの良い食事は、体力や免疫力を高めることができます。
特定の食品に偏りすぎないように、さまざまな食品から栄養を摂ることがポイントです。
栄養バランスの良い食事は、身体の健康に大切だというイメージは皆さんあるかと思いますが、実は食生活の偏りが、うつ病など精神疾患のリスクとも関連することを示した研究結果も次々に発表されています。
特に、ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸・EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が影響あると言われています。
また体質やご病気によって必要な栄養素が変わってきますので、特に自分にとって必要な栄養素は何かか、を理解しておくことも大切です。
日頃から栄養バランスを考え食生活を整えていくことは、身体の健康のみならず心の健康にも重要な役割を担っているのです。
十分な睡眠
質の良い睡眠は、疲労回復や精神の安定をもたらします。
眠れないときは、体が重く感じたり、予定に対してもやる気が出ないなど、日常生活を送る上で睡眠は私たちの体調に大きく影響しています。
質の良い睡眠が取れたときは、朝すっきり感から、気持ちよく一日のスタートを切ることができ、その日の活動意欲もアップするのではないでしょうか。
この活動意欲は仕事のパフォーマンスにも影響しますので、ご自分の睡眠を見直していくとよいでしょう。
適度な運動
定期的な運動は体力の維持だけでなく、ストレス解消にも役立ちます。
ウォーキングやジョギング、ヨガなど、ご自分に合った運動を取り入れると良いでしょう。
障がいの特性によっては疲れやすい方もいらっしゃりますので、無理なく取り組める運動がいいですね。
長時間の運動が難しい場合は、いつもバスや電車に乗ってしまうところを一駅歩いてみるだけでも気分転換になりますし、日常の中で無理なく運動を取り入れることができます。
私のいる就労移行支援では、毎日ラジオ体操をして体をほぐしています。
ラジオ体操は全身運動ですし、今までの経験の中で取り組んだことがある方も多いと思いますので、簡単に始められておすすめです。
ぜひご自分に合った方法で運動を取り入れてみましょう。
③メンタルヘルスの管理
ストレス管理も健康管理の重要な要素です。
ストレスを適切に解消する方法を見つけることが、心の健康を保つ鍵となります。
日常生活や職業生活を送るうえでは、避けられないストレスが多くあります。
私の例でお伝えすると、電車に並んでいた時に横入されてストレスを感じたり、今の時季ですと暑さでストレスを感じます。
仕事が思うように進まないとき、職場の同僚との関係が上手くいかないときなど、私たちは生活をしている中で、ストレスを感じる場面に幾度となく遭遇することがあると思います。
その際にストレスを上手く対処できていないと、その後他のストレスがかかった時に余計に苛々してしまったりと、自分を苦しめてしまうことにもなりかねません。
ストレスと上手く付き合っていくことは、実は自分自身を守る術になるのです。
ストレスへの対処法については、ストレッサー(ストレスの原因)を取り除く方法や、趣味やリラクゼーション法を取り入れてストレス反応を和らげる方法、またストレス耐性を高める方法など、色々な方法が知られています。
就労移行支援ではこのようなストレス対処法についても学ぶことができますので、ぜひスタッフにご相談ください。
その中でご自分に合ったストレスへの対処法が見つけられると良いでしょう。
ですが、日々感じるストレスの中にはご自分で対処しきれないものもあるでしょう。
そんなときは、必要に応じてカウンセリングや専門家のサポートを受けることができます。
対処がしきれず一人で抱え込んでしまうと余計に体調を悪化させてしまうことが考えられます。
辛い時は一人で抱え込まず、周りの人や専門家に相談してみましょう。
④自己理解を深める
自己理解を深め自己管理能力を向上させることも、健康管理において重要な役割を果たします。
「自己理解」は心と身体の健康をサポートするために欠かせないスキルです。
私たちは生活の中で色々な感情を感じていると思いますが、意外と自分の感情に気付くことは難しく、自分が知らない間に不安や心のモヤモヤを溜めこんでいることも少なくありません。
障がい特性によっては、ネガティブな感情を感じやすく落ち込んでしまう方もいらっしゃるかもしれません。
自分の感情を理解することは、ストレスや不安を軽減し、適切な対処法を見つけることにつながりますので、まずは日々感じていることに目を向けてみると、今まで気付かなかった感情にも気付けるようになっていくでしょう。
また自己理解は自己評価にもつながります。
自己評価は就職活動を進めていくうえで大事なことです。
就職活動を進めるときには、学生時代からの自分の生活(好きだったこと・苦手だったこと・具体的な出来事)を見つめなおし、そこから強みや弱みを整理していく方法で自己分析に取り組まれる方も多いかと思います。
このように自分自身の経験や価値観を振り返り、自分への理解を深めることは、就職活動では必要なことです。
就労移行支援事業所では、個人でご自分と向き合う方法以外に、グループワークなどの集団場面やプログラムから自己理解を深めていただくこともできます。
プログラムを通して、今までのご自分の取り組みを振り返っていただいたり、その中でご自分の課題を認識することができるでしょう。
グループワークでは、その時に感じた気持ちやご自分の行動を振り返り自己理解を深めていただくことができます。
「いつもは緊張しないけど今日は異様に緊張したな、なぜだろう」と自分自身の緊張の傾向を振り返っていただいたり、「今日のグループは発言がしやすかったな。全員が自分の方を見て聞いてくれて嬉しかった」といったように、感じたことや感情を振り返ることで、自分が心地よいと感じる傾向を知ることができます。
このように色々な側面から自己理解を深めていくことは、広い視野で自己評価をしていくことにつながります。
自己評価ができていると、自分の出来ることに焦点を当てて判断できるようになりますので、自己肯定感の向上にもつながるでしょう。
また自己理解を深めていくと、対人関係においても人と適切な距離を保つことができるようになります。
自分自身のパーソナルスペースを知ることで、自分の安心できる距離感でコミュニケーションをとることができますし、人との心理的な距離感を知ることで、ご自分の感情を優先して人と適切な距離感を保つことができるようになるでしょう。
職場では色々な方が働いていますし、仕事をしていく中には苦手に感じる相手もいるかもしれません。
自己理解を深めることで、その相手とも適切な距離を保ち、結果的に自分を守ることができるのです。
仕事をしていくうえで、自分自身の健康状態や限界(キャパシティ)を理解し、それに応じて業務を行うことが大切です。
せっかく希望する会社で働けていても、自分の限界を超えて働いてしまい、体調が崩してしまったり、就業の継続が難しくなっては非常にもったいないことです。
時にはご自分の生活や業務内容を振り返り、無理はしていないか?スケジュール過多になっていないか?を見つめなおし、必要なときは相談をしたり休みの日にはしっかり休養をして、自分自身を調整していけるとよいでしょう。
では、日ごろから【心と身体の健康管理】のためにどのような方法を実践していけばよいのでしょうか?
2.心と身体の健康管理を実践していくために
健康管理を実践するための具体的な方法をいくつかご紹介します。
日記をつける
まずはご自分の現状について知ることが大切です。
例えば、毎日の食事、運動、睡眠、体調を記録することで、健康管理の意識を高めることができます。
手書きの日記はもちろんですが、最近ではスマートフォンのアプリで、睡眠時間を測定してくれるものや、体調や感情について入力できるもの、また歩数を稼いで遊べるゲーム形式のものもたくさんありますので、ぜひご自分に合う方法を見つけていただければと思います。
定期的なリフレッシュ
短い休憩や休日を利用してリフレッシュすることが重要です。
就労移行支援では訓練時間と休憩時間が明確に分かれているかと思いますが、訓練の合い間に適切な休息を取り、リラクゼーションの時間を設けることは、ストレスを軽減したり、集中力を維持していくことにつながります。
例えば、椅子でできるヨガや瞑想など、また深呼吸も有効です。他にも軽いストレッチなどの軽い運動を取り入れることにより、心身のリフレッシュが図れます。
職場でも同様に、周囲への配慮をしつつ、仕事中でも手軽にできるリフレッシュを取り入れるといいですね。
周囲とのコミュニケーションによる情報共有
家族や友人、同僚とのコミュニケーションを大切にし、サポートを受けることも重要です。
日頃から自分の健康状態やどんな時にサポートが必要になるのか、周りの人と情報を共有しておくと良いでしょう。
これにより、孤立感を防ぎ、心の健康を維持しやすくなります。
これら以外にも、就労移行支援では、お一人お一人の困り感や課題感に沿って色々なサポートを行っています。
プログラムを通してストレスについて理解を深め、ご自分に合う対処法を実践していただいたり、面談やプログラムを通して自己理解を深めていただくことができます。
場合によっては通院同行のサポートも行っておりますので、一人で抱え込まず、ぜひ周りの支援スタッフに相談してみてくださいね。
3.まとめ
「心と体の健康管理(病状管理)」は、健康で豊かな生活を送っていく為に、また安定した職業生活を送るための基盤となる部分です。
職業準備性ピラミッドでは、心と身体の健康管理は、ご覧の通り一番下に位置し他のスキルを支えています。
この「心と身体の健康管理(病状管理)」が不足してしまうと、ピラミッドが不安定になってしまいます。
いつ倒れるかわからない状態ですと、大丈夫かなと心配になってしまいますよね。
他のスキルをしっかり整えられていても、土台が不安定がゆえにせっかく身につけたスキルが活かせないことにもなりかねません。
今回お話しした要素を日々意識して実践していくことで、健康を維持し、仕事のパフォーマンスを向上させることができるでしょう。
「心と身体の健康管理」を整え、安定した職業準備性ピラミッドを目指していきましょう。
📢次回は日常生活管理・基本的な生活のリズムについてお話できればと思います。
就労移行支援事業所「アクセスジョブ」ではいつでも見学や無料体験を受け付けています。
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お待ちしております。