コラム「障がい」と「仕事」
【障がいと仕事】職場で人間関係と仕事をスムーズにするスキルとは
2024.09.02
こんにちは。
前回は、「日常生活管理・基本的な生活のリズム」が安定した職業生活にとって重要であることについてお話ししました。
今回は、このピラミッドの3つ目にある「社会生活能力・対人技能」についてみていきましょう。
1.はじめに
仕事をする上で、職場で求められるスキルは多岐にわたります。
上司や同僚と円滑にやり取りするためには、職場での日ごろの挨拶や会話、相手に適した言葉遣いが大切ですし、時には感情コントロールが必要な場面もあるでしょう。
円滑に業務を進めていく為には、上司や同僚と協力・協調する力や他者を尊重しつつ、自分の意見やニーズを適切に伝える力も重要です。
これらは全て「社会生活能力・対人技能」にあたります。
仕事をするということは、ただ業務をこなすというだけではなく、このように上司や同僚と良好な関係を築き、円滑に業務を進めていくことが大切です。
2.基本的な対人スキル (挨拶・会話・言葉遣い)
挨拶・会話・言葉遣いは、人間関係を構築するための土台となります。
中でも挨拶は相手への敬意を伝え、仕事をする上でのコミュニケーションを円滑にしていくことにつながります。
例えば、朝出勤した際に「おはようございます」と挨拶を交わすことは、相手がその場にいることをしっかり認識し、相手の存在を大切に思っているというメッセージを伝えることができます。お互い笑顔で行うとさらによいですね。これにより、相手は自分が職場で尊重されていると感じ、良好な関係を築きやすくなります。
会話は、片方が一方的に話し続けるだけではなく、相手の話を聞いて、それに応じた反応を返すことが大切です。これらは、会話はお互いの理解や共感を深める場となります。
会話を繰り返すことは信頼関係につながります。
仕事をしていく上では、相手に適した言葉遣いも大切です。
職場では、上司や同僚、部下、取引先など、さまざまな人と接する機会があります。その為相手に合わせた言葉遣いを使うことで、信頼感や尊敬を得やすくなります。
このように日頃から挨拶・会話・言葉遣いを意識し、習慣的に行っていくことで、職場の人々はお互いに親しみやすさを感じ、自然なコミュニケーションが生まれます。この親しみやすさから上司や同僚との信頼も強まり、業務で発生する報告・連絡・相談がしやすい関係を築けるでしょう。その結果、仕事を円滑に進めることができるのです。
障がいのある方の中にはコミュニケーションへの苦手さを感じている方も多くいらっしゃいます。そのような方にはまず挨拶・言葉遣いから取り組んでいただくことをおすすめします。
挨拶や言葉遣いは、どの職場においても活かすことができますし、就労移行支援でも毎日必ず練習ができるので習慣化しやすい為に面接でのアピールポイントになります。
取り組み方はスタッフに相談しながら、少しずつステップアップしていけると良いでしょう。
3.感情コントロール
皆さんは、感情コントロールと聞いてどのようなイメージがありますでしょうか。
障がいのある方にとって、職場などの社会生活を安定して過ごしていく時にこの感情コントロールはとても役に立ちます。
例えば、障がい特性によっては、感情を衝動的に表してしまう方もいらっしゃいます。怒りを感じているときにそのまま言葉や態度に表してしまうことで、相手は「自分が攻撃されている」と感じてしまい、結果的に自分の人間性を誤解されてしまうかもしれません。
他にも感情の波が激しい方は、その様子を見ていると周りの人は「どう接していいかわからない」と困惑し、その後のコミュニケーションを妨げる要因になりかねません。
障がい特性と自分の感情を理解し上手くつき合うことで、感情が動いた場面でも冷静に自分の考えや気持ちを伝えることができるようになります。
冷静に対応できていると、周りの人も安心してコミュニケーションを取ることができますし、仕事をする上で必要なコミュニケーションを円滑にします。
感情をコントロールする第一歩は、自分がどんな感情を抱いているのかを認識することです。これにより、自身の感情への感知が高まり、早期に対応することができます。感情が高まった時の対処としては、感情を落ち着けるためにもリラクゼーションの実践をおすすめします。障がい特性をお持ちで就労を目指している方は、職場の中でも実践できるリラクゼーションがあると良いでしょう。
例えば、「休憩時間にコーヒーを飲む」「リフレッシュのため顔を洗う」などいかがでしょうか。
必要があれば専門家から認知行動療法※の支援を受けることも有効です。
(※自分の思考パターンと、それが感情や行動にどのように影響しているかを理解し、より適切な反応を選択する方法を学ぶ心理療法)
このように感情コントロールは、障がいのある方にとって円滑な人間関係を築き保つための大切なスキルとなります。自分に合った感情コントロールの方法を見つけることで、仕事をする上で必要なコミュニケーションを円滑にしていくことができます。
4.協力・協調する力
協力・協調をする力は、職場でのチームワークの基盤です。
例えば、情報共有・助け合う姿勢・フィードバックの受け入れることがここに含まれます。
必要な情報をタイムリーに共有することで、チーム全員が最新の状況を把握し、適切に対応できるようなりますし、これによりチームの生産性が向上します。
同僚が忙しいときや困っているときに、自分がサポートできることがあれば積極的に手を差し伸べることにより、信頼感やお互いへの尊敬が生まれ、働きやすい環境が作ることができます。
具体的な声掛けとして「何か手伝うことはありませんか」と尋ねてみましょう。あなたに助けてもらうと、今度はお相手が助けてくれます。
自分の仕事に対するフィードバックを前向きに受け入れ、必要に応じて改善を行うことで、チームとして協力体制がつくられ、問題が発生したときに迅速かつ効果的に対応していくことができます。
このように協力・協調をする力は、チーム力を高めることができ仕事をスムーズにさせます。
障がいの特性上、他者視点が弱くなかなか同僚が困っていることを察知できなかったり、相手からのフィードバックを受け入れられない方もいらっしゃるかもしれません。
そのような時は、日ごろからコミュニケーションを意識的にとり、相手を深く理解できると、何に困っているのかに気付きやすくなるかもしれません。
また、日ごろから「私は〇〇と思うのですが、△△さんはどう思いますか?」など、自分から積極的にフィードバックを受けることで、徐々に視野を広げることができます。
ぜひできそうなことから取り組んでみましょう。
5.他者を尊重しつつ自分の意見やニーズを適切に伝える力
職場で働く上で、他者を尊重しながら自分の意見やニーズを適切に伝える力は、特に障がいのある方にとって非常に重要なスキルです。
このスキルにより、人間関係を維持しながら周囲と円滑にコミュニケーションをとれるようになるので、仕事をより効果的に進めることができます。
他者を尊重するとは、相手の意見や感情、立場を理解し、それに配慮することを意味します。障がいのある方にとって、自分の考えやニーズを理解してもらうことは非常に大切ですが、そのためにはまず、相手の意見を尊重する姿勢が求められます。
例えば、同僚や上司が自分の意見を述べているとき、その意見に耳を傾け、理解しようとする姿勢を示すことで、相手は自分が尊重されていると感じます。これは、相手があなたの意見を受け入れやすくするための第一歩です。
障がいのある方は、時に特別な配慮やサポートが必要となる場合があります。そのため、自分のニーズを適切に伝えることは、働きやすい環境を整えるために不可欠です。
しかし、この際に気をつけるべきポイントは、相手に対して無理を強いるのではなく、協力をお願いする形で伝えることです。
例えば、聴覚障がいのある方が会議での発言を聞き取りづらいと感じた場合、「私は時々、会議中の発言を聞き取りにくいことがあります。もし可能であれば、発言のあとに要点を簡単にまとめていただけると助かります」といった形で、自分のニーズを相手に伝えることが効果的です。このように、相手に協力をお願いする形で伝えることで、相手も快く協力してくれる可能性が高まります。
障がいのある方が職場で自分の意見やニーズを適切に伝えることは、働きやすい環境を作り出すために必要不可欠ですし、ご自分の仕事を進めていく上で大切なスキルです。
6.まとめ
今回は職業準備性ピラミッドの3つ目にある「社会生活能力・対人技能」についてみていきました。
障がいのある方が安心して仕事をしていくためには、この「社会生活能力・対人技能」が非常に重要です。このスキルを身につけることで、上司や同僚と良好な関係を築くことができます。特性上の困りごとについても周りのサポートを受けながら仕事を進めることができるでしょう。
就労移行という準備段階で、これらの能力の向上させることで、より豊かで充実した職業生活を送ることができます。
ぜひスタッフと相談しながら、「社会生活能力・対人技能」を整えていきましょう。
📢次回は基本的労働習慣についてお話できればと思います。
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